ほんとのほんと

なかなか目標達成できなかったり、ダメだってわかってるのに人を好きになっちゃったり、こどもになりたかったり、おとなになりたかったり、そんなアラサー女の旅物語。

旅することと暮らすこと

わたしがはじめてバックパックを背負ったのは、21歳、大学3年生の夏休みのことだった。






その頃は"世界一周"なんてことをしている人が世の中にこんなにたくさんいるなんて知らなかったし、そんなことを考えたこともなかった。






短期バックパッカーについて調べていくうちに、 世界一周ブログランキングに出会い、夢中になって、隅から隅まで色々なブログを読み漁った。 当時は神林一馬さんだったり、タビロックさんだったり、恋する咲ログさんだったり、 そんな方達がランキングを盛り上げていた頃。 個人的には"ひとりのり"のノリさんの、ゆるーいブログが大好きだった。






ブログを読むことはわたしの生活の一部になり、 わたしが大学を卒業して社会人になっても、 それは変わりなく続いていた。 その間に何人の旅人が旅の準備を始め、旅をし、元の生活に戻っていったのだろう。わたしはただ、その生活の移り変わりをリアルタイムで追っていた。 その頃は、わたしも退職して絶対に世界一周する!なんてぼんやりと、でも確実に、考えていたけれど、結局あれから7年経った今も、わたしは世界一周には踏み出していない。






その間、7回もの誕生日を迎えるうちに、 あれだけ絶対としていた、世界一周に対する思いは少しずつ冷めていった。 21歳のわたしには想像できるレールが目の前にあって、そこから少しはみ出した世界一周に憧れていたのかもしれない。 敷かれたレールが目の前に見えても、それはまだ少し先の話で、仕事や家庭や、そんなものが、まだ少しだけ自分とは無関係のものだったから、ただわくわくできたのかもしれない。






社会人2年、3年と過ごしているうちに、 仕事にやりがいを持つようになった。 周りの友達や先輩、同年代の旅仲間が続々と結婚した。 先に言っておくと、わたしはすごく結婚願望があるわけでも、すごく子供が欲しいわけでもない。 それでも地に足付けて、自分で、若しくは誰かと一緒に、居心地のいい場所を作っていくみんなが少しだけ羨ましかった。それはもちろん現在進行形で。






周りがどんどん"現実"に同化していくなかで、 学生時代に出会った同世代の旅仲間からは、 「いいね!まだ旅してるんだね!でも、俺はもういいかなー!」 「やっぱりハワイでのんびりするのがいいわー!」 なんて言葉が聞こえることが増えた。 安宿で安いビールを片手に、「出会えてよかったね!最高!」なんて笑っていた、今よりもっと世間知らずだったわたしたちは、 もうとっくに大人になって、あの夜は一瞬の人生の通過点だったということ。






至って当たり前だ。 働き始めて時間はなくなり、働いているたくさんの大人と新たに出会ったことで、あの時にはなかった新しい目標だってできたはず。 お金は少しだけ自由に使えるようになって、 旅には冒険よりも、日常での疲れを埋めるための安らぎを求めるようになる。 それはわたしにとっては寂しいことでもあり、でも、歳を重ねているうえでは必然的なことでもあり、もちろんこんなわたしにも少なからずはある感情で。






要するに、 歳を取って腰が重くなるって、こういうことなんだと思う。 単純になにかが面倒になるわけじゃなくて、周りの環境が変わって、考えることが増えて、やらない理由が増えてしまうこと。中途半端な欲望を諦めて、守るべきことが目の前にあること。






わたしにだってこんなふうに考えることはたくさんあるけれど、職を持たずに海外をふらふらしているこの生活が正解なのかはよくわからないけれど、でも、辛うじてまだ"このまま行かなかったら人生後悔するな"という気持ちが残っている。 もしあと5年後に死ぬことがあるのだとしたら、その死ぬ間際に私が1番に思うことは"結婚したかったな"でも"バリバリ働けばよかったな"でもなくて、"なんで世界を見ることをあの時やめてしまったんだろう"と思うことが、想像できるから。






だから、わたしはこの2年で、わたしが21歳の時に描いた"旅"を叶えて、1度終結させたいのだ。 旅とは、わたしが地に足を付けて、暮らすことを楽しみ始める前に、必要不可欠なものなのだ。